今回は、民法の後半部分となる「債権」及び「親族・相続」規定、そして不動産と関連の深い特別法を解説します。
年毎に難易度の差が大きいと言われる権利関係からの出題ですが、10年~20年スパンで見ると確実に難化傾向にある分野です。
過去問を中心に学習することはもちろんですが、新しい部分を問われることも多いので、基本書による理解を進めることも疎かにしてはいけませんよ。
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目次
第3章:民法「債権」の解き方
債権は権利関係全般において最重要分野と言うべき部分です。
難易度は低くありませんが、出題数が多く、(宅建業法の得点を前提として)この部分を得点することが合否を分けると言っても良いでしょう。時間をかけてでも学習したい部分です。
保証及び連帯保証と連帯債務に関する出題
保証人や連帯保証人に関する規定で、出題される年とされない年があります(ここ15年の確率としては約50%程度)。
保証契約の問題の大半は、肢1~4の全てが共通の焦点を持って出題されるので、知識があれば得点しやすい部分です。
出題傾向としては以下の部分が多いので、重点的に学習しましょう。
■保証契約の有効性…保証人が債務者の同意を得ること無く保証契約を締結した場合等
■保証と連帯保証…分別の利益が中心です。求償権との関連性もチェック。
■時効中断と保証契約…よく問われます。主たる債務者との共通点や違いを整理。
連帯債務について
恐怖の契約の代名詞「連帯債務」も、宅建試験の出題範囲です。
とは言え、ここ10年間は1回しか問われておらず、保証債務と比べると重要度は低い部分だと言えます。(過去15年まで遡ると数回は問われています)
問われるとしたら、おそらく連帯保証契約との性質の違いなので、両者の相違点を把握することが大切です。
債務不履行と解除に関する出題
非常に問われやすい部分で、多い年は2問出題されています。
費用が高額な不動産取引において最も危惧すべき部分でもありますから、実用性という意味でも学習することをオススメしたい部分です。
出題方式のバリエーションが多い点が特徴で、年によって問題の気色がまるで違います。
■モデルケースを提示した上で、手付金と解除の関係性を問う問題
■それぞれ異なる判例をベースに損害賠償請求権の有効性と問う問題
■金銭債務の特質を利用して、通常債務との違いを問う問題
このように、軽く勉強しただけでは対応できない問題も多く、知識の充実は必須です。
過去問を参考にしながら、テキストで知識を補填する形で勉強すると良いですよ。
売買に関する出題
問われやすい部分ではありますが、全ての不動産取引のベースとなる部分でもあるので、試験対策としては出題頻度以上の価値がある部分です。
しっかりと腰を据えて学習を進め、完璧と感じるまで過去問を繰り返しましょう。
手付の解除
不動産取引の常識である手付金に関する部分です。
取引の進行状況に応じて手付解除できる時とそうでない時の違いを把握する必要があります。
単純な形式の出題の他に、モデルケースから履行状況の判断を行う出題形式が想定されるので、過去問を利用して丁寧に学習すると良いでしょう。
「履行に着手」とは具体的にどのような行為を意味するのかを、理解しているかが重要です。
担保責任に関する規定
民法上の担保責任は、不動産取引において非常に重要な制度です。
特に瑕疵担保責任は過去幾度となく出題されていることもあり、合格のための必須知識。
担保責任全般に言えることですが、買主が善意か悪意かで、まるで状況が異なってきます。
本試験もそのあたりを主眼に置いた出題が中心ですから、それぞれの違いを正確に把握することが必要だと言えます。
学習法としてはテキストの熟読が必要になりますが、独学理解が難しい場合は講義を受けてでもコツをつかみたい部分です。
賃貸借に関する出題
売買と並んで重要な項目ですが、不動産取引ではその大部分において借地借家法が適用されるため、複次的な理解が必要となる部分です。
詳細は借地借家法にて記載しますが、両者の関係を正しく把握しない限り、合格は大きく遠のきます。
なお、売買分野のみをテーマにした出題頻度は、過去10年で7回です。
■賃借権の期限や解約などの契約に関する基礎知識
■賃借権の譲渡や転貸
■敷金の扱い(承継や返還請求権に加えて、家賃への充当の可否など)
上記のポイントは特に重点的に理解したいところではないでしょうか。
賃借権と言うと、レオパレスやアパマンショップなどをイメージする方も多いと思いますが、この単元ではもっと商取引と言いますか、業界取引的なものを想像した方が適切かもしれません。
不法行為に関する出題
故意または過失による不法行為に関する出題です。
過去10年間で6回ほど問われているので、必ず抑えておきたい部分です。
単純な問題が少なく判断に迷いを挟む部分も多いので、注意して学習しましょう。
■賠償の履行遅滞や相殺
■損害賠償請求権の時効と中断の条件
■債務不履行と不法行為の法的な扱いの違い
■不法行為発生時の使用者責任(雇ってる人が不法行為を起こした場合)
このあたりは特に問われやすいポイントです。
過去難問も出題されましたが、総じて得点しやすい単元です。重点的に学習しておくべきポイントだと言えます。
第4章:民法「相続・親族」の解き方
民法の相続及び家族に関する出題です。
ただし、過去の宅建試験において親族部分からの出題が行われた例はほとんど存在せず、試験の合格を目標とした場合、学習の必要性はまさに皆無となります。
必然的に、ほとんどの年で1問は出題される、「相続」を中心として学習を進めることが合格のポイントになります。
法定相続と関係制度に関する出題
相続の主題とも言えるテーマで、宅建試験でもしばしば出題される部分です。
被相続人の死亡から遺言、法定相続と繋がる流れを確認することからはじめましょう。
特に試験問題で問われやすい「家族関係による法定相続分の計算」は、家族関係による取り分を正確に把握することが必要です。
実際の問題の中には、配偶者や子の他に孫や兄弟姉妹が登場することもある上に、一部の登場人物が死亡や放棄をしています。
教科書を読んだだけで理解できない方は、過去問をいくつか解いてみるとコツをつかみやすいでしょう。
遺留分制度と減殺請求権に関する出題
遺留分制度と減殺請求権は、「たとえ被相続人の遺言があろうとも、遺言に反して法定相続人が一定の取り分を確保できる」という制度。
実社会でも本制度を知らずに泣きを見る人は多く、学習意義が高い部分です。
遺留分は比較的新しい制度なのであまり出題例がありませんが、過去3回ほど宅建試験でも問われています。
比較的簡単な出題が多いので、遺留分の基本的性質を理解していれば十分に正答可能です。
ぜひ抑えておきたいポイントだと言えます。
第5章:「特別法」の解き方
民法からは毎年合計10問の出題が行われ、特別法からは4問程度出題されます。
特別法の中では特に借地借家法が重要で、借地及び借家で合計2問出題されるのが恒例です。
特別法は民法との関連性を問う出題が多く、両者を理解することに主眼を置くことが重要だと言えます。
借地借家法に関する出題
借地借家法は対等取引を前提としている民法の規定を、借主寄りに補強した感じの法律です。
基本的に不動産取引は借地借家法の適用を受けることとなります。
問題としては下記のような要素を利用した引っ掛け問題が多く、このあたりを理解しているかが問われます。
■不動産取引のうち、借地借家法に規定されていないものは民法の適用を受ける
■動産取引の場合は、原則として民法が適用される→借地借家法との混同を狙う出題
■一時使用の賃貸借に関する特例法規(大部分の適用を受けない)を理解する
実際の試験問題に触れるとより理解しやすいのですが、とにかく民法規定との相違点が突っ込まれやすい部分です。
民法規定と合わせて理解していなければ、「民法1問+借地借家法2問」を落とすこととなり、本試験では大きなマイナスとなることは間違いありません(ほぼ不合格と言っていいかも)。
民法との比較学習がいかに重要かを、肌で感じることになる単元だと言えます。
区分所有法に関する出題
区分所有法は、分譲マンションを意識するとわかりやすい部分です。
毎年必ず1問は出題されるのですが、マン管と異なり宅建試験ではあまり深く問われません。
落としても大きな問題はない部分ですが、出来れば得点したいものですよね。
■管理組合の専任や解任、管理者の権限等に関する規定
■規約や集会における議決権及び賛同者の割合の違い
このあたりが問われやすい傾向にあるので、確認しておきましょう。
不動産登記法に関する出題
文字通り登記に関する法律です。
区分所有法同様に毎年必ず1問は問われます。
テキストを中心に学習するスタンスとなりますが、実際の登記記録を目にしながら学習すると効率的に理解できるでしょう。
ご自宅の登記簿やネット公開されている登記簿を学習用に拝借するのも1つの手です。
出題傾向としては、
■登記の手続や申請に関する問題(代理権との絡みも)
■仮登記の手続きや分筆・合筆に関する規定
などが問われる傾向にあります。
難易度が高い年は多くの人が落としてしまう問題なので、無理はせず学習を進めましょう。(ただし、実務では重要な知識です)
コラム:判例問題や条文問題について
新しい出題形式として話題となっている判例問題や条文問題について解説します。
どちらも受験生を苦しめる問題として数えられているので、未受験の人は受験前にチェックしておきましょう!
判例問題とは?
平成20年から登場した最高裁判所の判例をベースまる写しにした問題。
最高裁判所が作った文章をそのまま問題文に引用しているため、簡単なことを難しく長ったらしい文章で表現している点が特徴です。
他問題とあまりにも違いすぎる雰囲気に恐怖する初見受験生も多く、初学者が一度は目を通しておくべき出題形式だと言えます。
実は問題文に答えが書いてある
判例問題は実は法律ではなく国語の問題でして、長い判決文の中に答えが書いてあります。
したがって、相応の時間と中学卒業程度の読解力があれば、知識ゼロでも正答を導くことが可能です。
慌てずに問題に挑みましょう。
ただし、この問題は読み解くのに莫大な時間を費やす時間を必要とします。
夢中になって解いていると10分や15分はあっという間に経過するので、基本的には確実に正答できる問題を解き終わったあとに、取り掛かることが重要です。
流れに任せてしまうと時間が足りない!なんてことも、十分あり得ますよ。
条文問題とは?
平成24年から登場した新しい出題形式の問題です。
ごく短い文章が特徴で、「次の中に民法の条文にないものを選べ」と問いかけてきます。一般的には、正真正銘の難問として数えられており、厄介な部分です。
正しくても書いてないなら不正解!
条文問題をこれほど難しくしている理由は、「条文に書いてあるもの」を選べと要求してくる点です。
言ってることが正しくとも条文に書いていなければ不正解なので、完璧に正答するためには民法の条文を知らなければなりません。
もちろん、宅建の標準学習時間で民法の条文までカバーするのは土台無理。
場合によっては捨てる覚悟も必要です。
条文を知らずに正答するなら?
ただし、条文問題の正答率を引き上げる方法は存在します。
と言うのも、条文問題にはいくつかの肢が明らかに誤ったことを述べている(その肢が真であれば矛盾が生じる)ケースも多いので、これらを除外した消去法を採るんです。
これを駆使することで肢を絞り込むことができるので、残った肢の中から正しいものを選びましょう。
終わりに
以上が権利関係の出題ポイントです。
合格を目指すならば債権全般と借地借家法の理解は必須と言っても良いので、特に力を入れて学習を進めましょう。
権利関係に加えて、次の学習項目である宅建業法をマスターすれば、合格まで8割は進んだも同然です。
合格に大きく近づくことができるので、頑張りましょう。