今回は宅建業法の後半部分にあたる、8種制限や報酬、住宅瑕疵担保履行法を中心に解説します。
特に8種制限は3大書面と同じくらい重要な項目なので、力を入れて学習を進めるように心がけましょう。
権利関係と宅建業法をマスターすれば、宅建試験の7~8割はクリアしたも同然です。
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目次
第7章:8種制限
8種制限とは、宅建業者と一般消費者が取引を行う際に、不当な不利益を受けることが無いように、一般消費者を保護するために作られた制度です。
全般的に民法の修正ルールであり、該当する取引においては民法よりもこちらが優先します。
毎年数問は出題される部分なので、3大書面同様に時間をかけてマスターしましょう。
他人物売買の制限
法律初心者の方がみるとビックリするのですが、民法では他人の所有物を売買することも、法律上違法ではありません。
しかし、他人物売買の取引契約は履行される確率が相対的に低いので、消費者が被害を受けないように規制をかけています。
本試験では、登場人物に業者と一般人の属性を割り当て、その取引が規制対象に該当するかを判断することとなります。
☆過去の出題事例(簡略化しています)
■Aから不動産を買ったBが移転登記を済ませる前に、更にCに転売した
■Aから不動産取引を買う予約をしたBが、履行前にCに転売した
■Cが賃借中の物件を、持ち主のAが停止条件付でBに売却した
クーリング・オフ制度
不動産取引にもクーリング・オフは適用されます。
社会的に重要な制度ですが、毎年必ず1つの肢には入ってくるので、宅建試験的にもとても重要です。
クーリング・オフ制度は、出題された取引形式がクーリング・オフ制度の対象か否かを判断する出題が中心です。
制度適用のために必要な条件や例外規定を整理し、冷静に判断する能力が求められます。
■どこで契約したか → 事務所等での契約はクーリングオフができない
■例外規定 → 書面説明後の期間経過、引渡及び全額払が行われた時など
損害賠償額の予定の制限
不動産取引における損害賠償は高額なので、知識の足りない消費者が不当な賠償額を負わないようにと制限した制度です。
過去10年中9回は問われています。
内容的にはシンプルで、宅建業者が所有する不動産を一般消費者と取引する場合は、「債務不履行による損害賠償及び違約金の予定額が、両方合わせて取引額の2割を超えるものは制限する」というだけの単元です。
以下がこの分野のコツなので確実に押さえましょう。
■手付金は含まれない
■2割を超えた場合は、超えた部分だけが無効になる
総合科目として他の8種制限と絡めた出題が中心なので、他の項目を合わせた学習が必要です。
単体で出題された場合(例:平成17年問43)、それはサービス問題だと言えます。
手付金の制限
手付金も損害賠償の予定同様に2割の制限が設けられています。
手付金制度の知識は宅建試験の随所で求められるので、手付制度を全くご存知ない方は、ここで詳しく理解することをオススメします。
■ 規制の内容 → 2割を超えるものは無効
■ 特約の無効 → 買主であるに不利なものは無効
■ 手付の性質 → 解約手付の定義を理解
このあたりを中心に理解を進めるのが合格のコツです。
手付金の保全措置
物件の引渡し前に宅建業者が倒産した場合は、手付金が戻ってくる保証がありません。
本制度は宅建業者に受け取った手付金の保全措置を義務化することで、一般消費者の財産を守る目的を持っています。
手付金の保全措置は、単体出題(肢1~4が全て同じテーマ)として頻繁に問われるので、非常に重要です。
以下のポイントを中心に、全体像を整理しましょう。
■ 保全措置の方法 → 完成物件と未完成物件では適用範囲が異なる
■ 保全適用となる金額 → 未完成物件は要件が厳しい
■ 例外規定 → 買主への移転登記や所有権保存登記
瑕疵担保責任の制限
物件に瑕疵(キズの意味。不良物件的なものを想像してください)が生じたときに必要となる瑕疵担保責任について、買主である一般消費者に民法よりも不利な特約の押し付けを、宅建業者に禁止した制度です。
単体出題は数回ほどしか出ていませんが、総合問題として頻繁に絡んできます。
■ 例外規定の理解 → 引渡から2年以上の責任期間を持つ特約は有効
■ 2年未満の期間を設定した場合 → 民法上の規定が適用(買主が瑕疵を知ってから1年。当然買主にとても有利)
このあたりを理解しておくと、かなり解きやすいはずです。
割賦販売契約の解除制限・所有権留保の禁止
過去10年間で2回程度登場していますが、単体問題は1回のみです。
8種制限の中でも、これらの項目はほとんど問われることがありません。
相対的な重要度が低いので、後回しにして勉強することをオススメします。
第8章:報酬
不動産取引が成立した際に支払う、報酬額に関する制度です。毎年1問は出題されます。
比較的覚えることは多いですが、特に以下の点を把握することを重視しましょう。
■報酬限度額の計算方法 → 媒介or代理と、400万円未満or以上の違いを明確に
■賃借の媒介及び代理 → 売買の時との相違点を明確に
■消費税との関係 → 計算手順を確認し、免税事業者の特例を把握
厄介な計算問題が出る時も
この単元の注意すべきポイントは、その出題形式にあります。
基本的にはモデルケースを例示した上で各肢の問の正誤を問う形式で出題されますが、時折金額そのものを求める計算問題(例:平成16年問41、平成21年問41)が出るときもあります。
計算問題が出題された場合、各肢にはそれぞれ違う金額が記載されています。
受験生は正解となる数値を求める必要がありますが、これは問われているルールを全て把握していないと、正しい答えが導けません。
結果として消去法が使い難く、相対的に正答率が落ちてしまいます。
(一部の知識が抜け落ちていると、絶対に無いと消去した部分が正解になってしまうことも)
毎回問われるわけではありませんが、逆にこの問題を解くことができれば、制度の骨子を把握していることを意味しています。
練習問題としてチャレンジして見るのも良いでしょう。
第9章:業務上の規制
宅建業者に関する各種規制を問う部分です。
開業に必要な要件や届出などを中心に、幅広い知識を身に着ける必要があります。
ただし、基本的にはどれも簡単なので、丁寧に覚えていくと良いでしょう。
各規制を肢1~4に盛り込んだ複合タイプでの出題形式がメインです。
毎年1問出ているので、落とさないように正しく知識を身につけましょう。
一部を除いて難所と言うべき部分はありません。頻繁に問われる項目は以下の通り。
■ 従業員名簿に関する出題 → 記載事項や保存期間
■ 業務帳簿に関する出題 → 記載事項や保存期間、従業員名簿との相違点
■ 標識 → 標識を掲示する場所や記載事項
■ 案内書の届出 → 届出事項や届出義務者
第10章:監督処分や罰則
宅建業法に違反した場合の罰則等が出題されます。
毎年1問・大半は単体出題なので、しっかりと学習することが大切です。
基本的には、処分ごとの該当要件が問われます。
宅建業者と取引士には、違反項目ごとにそれぞれ3つの監督処分と対処(指導や報告)が割り当てられているので、そのあたりを重点的に学習して行きましょう。
☆よく問われる部分
■個別の違反と思われる事例に対して、それが処分事由に該当するのか
■処分に該当するとして、3種のうちどの処分に該当するのか
■該当する処分権限を持つ機関はどこなのか
このような問いかけが行われるので、正確に答えられるように学習を進めましょう。覚えてしまえば平易な問題ですが、身につくまではとても大変です。
第11章:住宅瑕疵担保履行法
大規模耐震偽装事件を契機に成立した新しい法律です。
姉歯一級建築士の名は記憶に新しいですよね。
購入した住宅に問題があった場合に、消費者の救済を行うことを目的としています。
過去10年の出題実績は7回ですが、これは法律自体が新しいので、実質的には毎年必ず出題されています。
この法律は問われそうな部分が絞られてはいますが、まだ出題数が少ないので確実とは言えません。
やや細かな規定が多いので正答するのが難しい時もあるでしょう。
■ 履行確保の具体的な方法 → 供託や保証金
■ 届出の手続 → 期間や違反時のペナルティ
■ 他の制度のと比較 → 民法や8種制限との比較知識
終わりに
繰り返しになりますが、宅建に本気で合格するなら、宅建業法は絶対にミスできない部分です。
他の科目と比べてあまり難しくないので、過去問中心に正答できるまで攻めて行きましょう。
パート1にて3~5回の練習が目安と述べましたが、時間が許すならば10回解いても不足はありません。
実際にそれほど解いている受験生も少なからず存在します。
解けば解くほど知識が固定化するので、とにかく愚直に反復学習を続けることが独学合格のコツです。