宅建士試験独学のコツ

法令上の制限攻略のコツ【宅建試験攻略】

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法令上の制限は、実際の不動産取引に則した法規定が中心の、高い専門性を持つ科目です。

覚える用語や定義も多く難解なので、基本的には権利関係や宅建業法をマスターした後に取り掛かることをオススメします。

なお、法令上の制限からは毎年8問出題されるので、捨てることはできません。

解ける問題を確実に取って行くことを重視しましょう。

 



法令上の制限攻略のコツ

法令上の制限では、土地建物に対するたくさんの法律を覚えなければなりません。

ですが、バラバラに勉強していては「どの法律がどこで適用されるのか」で混乱してしまい、本試験で素早く知識を引き出すことができない方もいます。

そこで紹介したい攻略法が、「建物ができるまでの流れに沿って勉強する」方法です。

具体的には以下の3ステップを踏んで勉強すると良いでしょう。

 

☆法令上の制限を理解する3ステップ

■ 土地を購入するときに適用する法律 → 国土利用計画法、農地法
■ 建物を建てやすいように造成する法律 → 都市計画法、宅地造成等規制法等
■ 建物を実際に建築する段階の法律 → 建築基準法、土地区画整理法等

 

これらのコツを抑えることで合格にぐっと近づきます。

 

第1章:農地法

農地法は日本国内の食料自給率や農業比率の維持のために、農家の権利保護を目的とした政治色の強い法律です。

宅建試験では毎年必ず1問出題されますが、他の法律と比べて難易度はかなり低いので、必ず取得したい問題です。

学習時は農地法の用語の定義と、農地法3~5条の理解の2つを重視しましょう。

 

農地法の用語

農地法には「農地」及び「採草放牧地」の2種類の区分が存在します。

まずは両者の違いを把握しましょう。

また、農地は登記簿上の地目の影響を受けず、現実に農地として活用されていれば農地として扱う考え方(現況主義)も、理解しておきたいポイントです。

 

農地法3条~5条の制限

いずれも農地や採草放牧地に対する制限規定です。

宅建試験では対象不動産に対して農地関係のアクションを起こす際、「〇条の許可が必要か否か」を問う出題が中心です。

 

■ 農業者が山林原野を取得して農地として造成する場合、3条の許可は必要か?
■ 農地所有者が2アールの農地を牧畜用畜舎に転用する場合、4条の許可は必要か?

 

このような問いに対して、正しく解答できるかが問われます。

例外規定も含めて、正確に把握できるように学習を進めましょう。

 

第2章:国土利用計画法

国土利用計画法はバブル時代に膨れ上がった土地価格を抑制するために作られた法律です。

最近はあまり重視されていないのか出題数は減少傾向にありますが、それでも毎年1問は出題されています。

 

なお、国土利用計画法は様々な規定のある法律ですが、最近は「事後届出制」以外からの出題はほとんど見られません。

仮に他の部分から出題されたとしても、せいぜい1肢程度。

優先度は低いと言えるでしょう。

 

事後届出制

国土利用計画法のメインとなる部分です。

取引する土地の区域区分と面積に応じて届出義務の有無が決まるので、必ず押さえておきましょう。

もちろん、「誰が、どのような内容を」届出するかも重要です。

 

また、事後届出が必要となる3要件(権利性・対価性・契約性)も覚えておくべきポイントです。

マスターしておくと、実際の問題において判断基準となります。

 

■ Aが所有する都市計画区域の土地6000㎡をBに売却する契約について、Bの代理人Cが契約を締結した場合、CがC名義で事後届出を行う必要がある?

■ Aが所有する市街化調整区域にある4000㎡の農地をBに売却する契約を、農地法5条の許可を停止条件として締結した場合、Eは事後届出の義務を負う?

■ 宅建業者のAとBが、市街化調整区域内の6000㎡の土地をBが権利取得者として売買する契約を締結した場合、Bは事後届出を行う必要はある?

 


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第3章:都市計画法

都市計画法は法令上の制限のすべての規定を理解する上で、基本となる法律です。

法令上の制限を理解する上で1番に勉強すべき場所です。

(本稿では法律を段階整理しているので、3章にて記載しています)

 

宅建試験では、毎年2問ほど都市計画法から出題されています。

ただし、都市計画法の範囲は非常に広い上に覚える項目も多いので、学習にはかなりの苦労を伴うでしょう。

実務上の知識としても重要になってくるので、時間をかけてしっかりと理解しておきたい部分です。

 

合格するためのコツ

ここでは、都市計画法の中でも特に覚えたい部分を記載します。

 

■ 都市計画区域の指定 → 都市計画区域及び準都市計画区域の項目です。両者の違いを理解するだけでなく、手続きや指定権限者についても理解しましょう。なお、県境にある区域は国土交通大臣が指定します。

■ 区域区分 → 区域区分ごとの性質や目的を把握しましょう。(後述の地域地区と混同しないように!)区域区分に関する知識は、国土利用計画法等でも必要になってきます。

■ 用途地域 → 非常に重要です。全12種類ありますが、それぞれの町の様子を頭の中でイメージしたり、ご自身が住んでいる地域に当てはめながら学習しましょう。全部覚えようとすると相当な難易度なので、多くの受験生が苦戦します。

 

第4章:都市計画法の開発許可制度

都市計画法による、民間のデベロッパーの勝手な開発を制限するための、重要な規定です。

難しい規定が多いので、ハッキリ言うと難易度が高いです。

 

開発許可

宅地開発を行う際に、許可が必要な場合と不要な場合を問う問題が中心です。

区域区分ごとに異なる面積が規定されているので、それぞれを理解しましょう。

 

また、農林漁業用建築物のような「例外規定」も頻繁につついてくるので、合わせて覚えておきたい部分です。

 

開発許可の手続

かなり複雑です。

許可申請の準備から工事完了までの流れを把握した上で、それぞれの段階で必要な書類や申請先、許可が出なかった場合の対応などを把握しましょう。

また例外規定も多いので、合わせて学習しておきたい部分です。

 

建築制限

ここも難易度の高い部分です。

工事完了の公告を行う前と後でそれぞれ扱いが違うので、それぞれの違いを理解しましょう。

また、例外規定も前後で異なりますから、大変ですが覚えておくべき部分です。

厄介なことに、試験問題では頻繁に問われます。

 

第5章:宅地造成等規制法

平地の少ない日本にとって、宅地造成等規制法はとても大切な法律です。

地盤の弱さから起きるがけ崩れや土砂災害等を防ぐために、安全基準を定めています。

 

ここ10年の宅建試験では毎年問われている上に、難易度はかなり低いです。

難しい法令上の制限では絶対に落としたくない単元なので、確実にマスターすることが合格のコツと言えます。

 

問われやすい部分

■宅地造成 → 造成工事の手続きの流れを把握しましょう。また、どのような工事が宅地造成工事に該当するかも、合わせて覚えておくべき部分です。

■造成宅地防災区域 → 規制区域以外で既存の宅地の安全確保を目指した制度です。宅地造成工事規制区域が新規宅地造成を対象としている点に対して、こちらは既存の造成宅地における防災を重視しています。

 

第6章:建築基準法(単体規定)

恐らく多くの人が耳にしたことのある法律ではないでしょうか。

建築物を作る上で必要な規定を取り決めた法律です。

 

毎年2問出題されるため宅建試験的にも重要度の高い法律ですが、如何せん難易度はかなりのもの。

覚えるには相当な労力が求められるので、記憶力の高い方ほど有利ですが、費用対効果は低めです。

 

 

単体規定

防火壁や避雷針、エレベーターやシックハウス問題などの設置義務や使用素材に関する規定です。

全て覚えるのはとても効率が悪いので、参考書を購入して出題ポイントに絞った学習を行いましょう。

毎年問われるとは限りませんが、忘れた頃に出題される厄介な部分です。

 

建築確認規定

単体規定の中では出題頻度の高い部分です。

特に建築確認が必要かを問う出題形式が多いので、例外規定を含めて正確に把握しましょう。

実際には、下記のように問われます。

■ 防火地域内の建築物を増築する場合、増築にかかる部分の床面積の合計が100㎡以内の時は、建築確認は必要か?
■ 準都市計画区域内に建築する2階建ての木造建築物を建築する際に、建築確認は必要か?

 

建築協定

地域に住む住民たちが自主的な制限を設けることで、建築基準法を超える厳しい制限をかけることができる制度です。

対象範囲内では該当する開発を行うことができません。

なお、さほど頻度は高くありませんが、直近10年間のうち3回は問われています。

 

第7章:建築基準法(集団規定)

法令上の制限の中でも、1,2を争う難しい部分です。

単体規定同様に範囲は広いので、ここでは問われやすい部分に集約して記載します。

ただ、ここで記載した規定以外の部分から出題されることもあるので、全体を幅広くマスターすることが大切です。

 

建ぺい率の制限

災害発生時を想定して敷地に空白となる部分を要求する制度です。

都市計画法で触れた用途地域ごとに定められている建ぺい率の割合が異なるので、正確に把握することが求められています。

例外規定もあるので、そちらもマスターしましょう。

 

容積率の制限

都市の過密化を制御する法律です。

こちらも用途地域によって変動する上に、例外規定があります。

なお、前面道路による容積率の修正はかなり問われやすいので、必ず覚えておきましょう。

 

防火地域及び準防火地域

耐火建築物にすべきものとそうでないものを判定することが重要です。

実際の出題形式は両者の判断を求める問題が中心となるので、両者の違いを正確に把握しましょう。

ただし、建築基準法規定同様に、覚えることが細かく難易度は高いです。

 

斜線や日陰の制限

隣の建物による日照時間の減少などを扱った制限です。

低層住宅関係の制限に加えて、斜線や日陰等の規制を定めています。

 

用途制限

数が多く厄介な用途地域の、具体的な建築基準を定めた部分です。

学校や住宅、病院などを建築する際にどの用途地域なら建てられるかを判断することになります。

料理店(キャバレー)や個室付浴場~(ソープランド)等の一見何を意味しているかわからない、誤解を招きやすい表現も多いので、注意が必要です。

 

第8章:土地区画整理法

街並みの整備などで耳にする機会の多い法律です。

宅建試験でも毎年必ず1問は問われます。

ただし、難易度は非常に高く難しい法律なので、無理して学習するよりは他の単元のマスターを優先した方が良いかもしれません。

 

土地区画整理事業

減歩と換地によって行われる整理事業に関する出題です。

組合による土地区画整理事業の手続きからの出題が中心で、組合設立に関する認可や土地所有者の同意、経費の徴収等の複数の規定が問われています。

 

換地計画全般

土地区画整理事業を行うための具体的な換地計画に関する出題です。

清算金や保留地など換地計画の要点となる部分はもちろん、仮換地制度の指定や効果についても全般的に問われるので、非常に難しい問題です。

 

換地処分

換地処分が行われた際の権利移動や清算金の確定、保留地の帰属先等を問う問題です。

細かな規定が多く他の部分同様に難易度は高いと言えます。

 

終わりに

以上が、法令上の制限に関する攻略ポイントです。

この単元は全般的に難しいので、かなり長い時間をかけて勉強することになります。

ただし、権利関係や宅建業法と同じ水準にまで正答率を高めることができれば、ほぼ合格は確定します。

税や免除科目に頼った受験スタイルよりは確実に合格率は上がるので、是非頑張ってマスターして見て下さい。

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